急成長しているSPAの業態について
ツイートSPA業態の勢いが盛んです。昨今、新たに出店している業態のほとんどがSPAと言ってもいいでしょう。しかし、SPAの仕組みを良いと認めるのは事実ですが、同時にリスクもあることを忘れてはならないでしょう。
SPAとは、厳密には原料の調達から商品企画、開発、生産、物流、販売、顧客管理、在庫管理など商品を一貫してコントロールする業態のことです。メリットとして、SPAへの切り替えを進めることにより、これまで日本のアパレル業界の抱えてきた「流通の多段階性によるコストアップ」を抑えることができた点、お客様の視点でモノ作りができた点、同時に粗利も確保できる点などが挙げられます。
常にお客さまの隣にいて、お客さまの要望を生産体制に反映できるので、その判断によって大量に投入したり、だめそうなものは数量を抑えたりと在庫のコントロールも容易なので、新しい時代を切り開いた業態モデルと言えるでしょう。
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これまでの品揃え専門店では、仕入れて販売する形態が多く、メーカーや卸に商品がなければ小売店舗でも商品を売ることができません。また、お客様が欲しいと言っているのに欠品していたりと、本当のニーズに応えられない場面が多々あったのです。
この販売チャンスのロスを無くすために、適時に適品を納品できる体制を作り上げたことこそが、SPAの業態の成功の理由でしょう。ところが、SPAにも課題があります。
- 自社企画商品しかないため、トレンドに合わなくなったらまったく売れなくなる危険性がある。
- 事前予測を誤ると大量のロスが発生する
- 一貫したクオリティコントロールが必要、特に生産現場の管理が重要
- 商品の問題はすべて自社責任であることから、高い品質管理が求められる
以上の課題は、SPAのメリットと隣り合わせに存在することを忘れずに、店舗開発を進めていかなければならないでしょう。
例えば、一時期の「無印良品」や「コムサ」などは、在庫が過剰傾向になった時期がありました。これらはトレンドの微妙な変化により、その判断の狂いから、店も在庫を抱え過ぎてしまったのです。
また、SPAは出店を増やさなければ、メリットが出てこない業態です。そのため、店舗や商品のクオリティを上げる努力も中途半端なまま、店舗数だけを増やす企業も見受けられますが、これは間違ったやり方でしょう。
SPAの本質をはき違えてはいけません。たくさん店を出せば、たくさん商品が作れて、コストも抑えることができ、儲けがでるという安易な発想で店を出すとお客様のニーズとズレて、大量のロス在庫を抱えることにもなりかねません。
あくまで、SPA業態の店舗は、お客さまにとって最高の品質の商品を、お客様にとって絶妙のタイミングで提供できるという点にあるということ忘れてはならないのです。これまで述べたようにSPAという仕組みには、たくさんのメリットがあると同時にデメリットも存在することを覚えていくことが必要です。
すべての企業がSPAのようにモノ作りにまで介入する必要はないでしょう。自社の適正はどの程度かという議論を慎重に行い、それでもSPAに転換すべきという判断が出たならば、業態転換すべきでしょう。時代の流れというだけで転換するのは、危険な判断なのです。
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